馬脚チラリズム

馬脚チラリズム

セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

三田織『白のころ』東京漫画社

BL漫画の短編集。セクシャルマイノリティものではなく、ほのぼの系日常BL。だけど、「まほうのおくすり」の親子関係が妙にリアルでなんかうわーってなった。Xメンのキュアみたいなおくすりをつくりたいおかあさんの息子の話。描き方は重くない。おかあさ…

那木渡『恋愛不行き届き』竹書房(ネタバレあり)

ずっと互いに好きというか性的な目で見てたけど、なんやかんやでこじれまくるふたりが主役のBL漫画。クローゼットなゲイ(自覚あり、自覚なし)の大暴走な話なんだけど、そうならざるを得ない背景がきちんと存在しているのが面白いと思った。 あとがきに「(…

エリナー・ファージョン 『ガラスのくつ』 岩波書店

ファージョンのシンデレラ。ディズニーみたいなひらひらした仕草でくるくる動く絵が浮かぶ。生き生きとしたキャラクターと美しい文章。キャラクターが、素敵なのもろくでもないのも人間くさくて楽しい。でもセクマイ読みなのでメインストーリーは置いといて…

手塚治虫 『MW』 小学館

手塚治虫(黒)のピカレスク的漫画。 ページのわりに内容がものすごく濃い。 主役の男二人がほのめかしじゃなく性的な関係を結んでいるので、社会派な内容だけどセクマイ面の感想だけ書きます。 MW(ムウ) 小学館文庫 全2巻セット メディア: セット買い この…

枝屋初 『ばけむこ』

セクシュアリティゆらぐなめくじファンタジーな和風web漫画(?) 説明がへたすぎて意味が分からないとおもうけれども、そういう話!すごい! ちゃんとなめくじがなめくじ!かたつむりもでるよ! かたつむり好き的にもマイナーなセクマイとしてもうれしすぎ…

小野ハルカ 『桐生先生は恋愛がわからない。』 小学館

まったく読む気のおこらないラノベ風タイトルのせいで萌え系とかハーレム系とかの恋愛漫画かと思ってたら、まさかの王道ハーレムに疑義を呈するAセク漫画だった! 主人公は生れてこのかた恋愛感情を抱いたことも恋にあこがれたこともない人。 アセクシャルか…

セクシュアリティの多様性を踏みにじる暴力と虐待―差別と沈黙のはざまで (アムネスティ・ジェンダーレポート)

好きな服を着るとか、好きな言葉づかいでしゃべるとか、好きな人と双方合意の上でつきあうとか、そんな「罪」をおかした人たちがどんな目に合わされたのかをつづったリポート。 差別なんてないよとか言ってる人や事情がわかっていない人にこそ読ませたい。ヘ…

諫山創『進撃の巨人』講談社

今更ながらの話題作。 14巻まで読んだ。 タイトルは知っていたけれど、おおきいもの(物理的な意味じゃなくて)と闘う系の話にはあまり食指が動かないので興味を持たずにきた。 が、置いてあったのをなんとなく読んだら面白かった。 キャラクターのそれぞれ…

オ・ジョンヒ『鳥』段々社

親にネグレクトされた幼い姉弟を徹底的に姉視点で描いた韓国の小説。 詩的な文章のおかげで雰囲気は幻想小説。 設定は『誰も知らない』に似てる。 でもお姉ちゃんと弟だから、かなしさの質が違う。 子供のかわいくなさがリアル。 こんな子供が近くにいたら不…

室生犀星『舌を噛み切った女 またはすて姫』新潮文庫

室生犀星の時代物短編小説。 芥川の平安ものとか坂口安吾の『桜の森の満開の下』とか、あの辺の雰囲気。 山賊の中で育った女が都の女と出会う。 なんとなーく雪の女王の山賊の娘を連想した。 あのこが悲しく大人になっちゃったようなお話。 野郎ども、とくに…

リンダ・ハーン『王さまと王さま』ポット出版

王子様とお姫様がしあわせになる話しかないのは教育上よろしくないよね。ということで作られたオランダの絵本。 王さまと王さま 作者: リンダハーン,スターンナイランド,Stern Nijland,Linda de Haan,Andrea Germer,アンドレアゲルマー,眞野豊 出版社/メーカ…

志村真介『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦』講談社現代新書

真の暗闇を体験するドイツ発祥のイベント、ダイアログインザダーク(DID)の日本版を主催した人の手記。 良いのはイベント自体への興味がわくこと。行きたい。もっと知りたい。悪いのは著者のマジョリティぶり。自分が知らないだけのことを「知られていない…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと死の秘宝』 静山社

ハリーポッター最終巻。つらいシーンや苦しい状況が目白押しだけど、ここにたどりつくための七年だと納得のいく決着だった。 この巻の序盤は、シリーズ中盤からどんどん増していく重さの最高潮だから、きつい。現実世界のそうだった過去や、そうなりかねない…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』 静山社

ハリーポッター六年目。おっもいなー。どんどん重くなっていく。 いやがる奴隷の意志を無視して力で無理矢理従わせる役を主人公サイドに持ってきたり、悪い人じゃないけど保身が大事とか、悪い人だけど(自分の)家族は大事とか、この期に及んでまた難しいテ…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 静山社

ハリーポッター五年目。過去あり大きな動きありでもりだくさん。早足のウサギたちが転びまくり、着実にすすんできたカメたちのかっこよさに(読み手が)救われる巻。老いも若きも男子は危機的傾向。女子たくましい。 きっとここは物語の中ですごく重要な時期…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』 静山社

ハリーポッター四年目。時代の恐ろしさがいよいよ過去だけのものではなくなってくる。こわいものから目をそらしてはいけない。 発売当時はこの巻まで読んだ。先に進まなかったのは、思春期アレルギーと、ファンタジーに重さを求めていなかったのが原因。と、…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 静山社

ハリーポッター三年目。両親の過去が少しずつ見えてくる。庇護者が万能でないことに気づく成長期。 最初の方でハーマイオニーの誕生日にちらりと触れるセリフがあった。そういえばハリーがもらうシーンはたっぷりあるけれど、あげるシーンはほとんどない。プ…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 静山社

ハリーポッターシリーズ、二年目。差別や違いのテーマが更に鮮明。 「特別なハリー」の葛藤が、周囲の反応への戸惑いから自分自身への疑問にシフトしてきた。そうであるからといって、必ずしもそうならなくてもいい。という部分に泣きたくなる。昔は気づかな…

アルコ『俺物語!!(7)』集英社 Aセク読み

超男前高校生が主人公の少女漫画。 男前というか「漢」というか「おのこ」というか「アニキ」というか。 少女漫画なのに主人公がごつくて暑苦しい野郎な異色作品。 その7巻がAセク的に面白かったです。 恋愛ものなのに恋愛向きじゃない人を無視せず描いてく…

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと賢者の石』 静山社

昔一度読んだきりだけど最近の再燃を見ていたら読みたくなった。記憶通りに面白い、優良な児童書。居場所のない子供がみいだされて居場所をみつける王道の一巻は確実に安心して読める。 自分が大人になって、著者のLGBTフレンドリーな姿勢を知った上で読むと…

タカハシマコ『スズラン手帖』一迅社

百合短編漫画集。 ひとつひとつの話はごく短い。 でもちゃんと、女の子と女の子の話。 絵がすごくかわいい。 こんな可愛いくせに苦さを含ませて強い。 かわいさを貫くために必要な強さを持ってる。 思春期のなんちゃらと片付けられてしまう思いを片付けさせ…

よしながふみ『きのう何食べた?』講談社

前から知っているし読んでいるんだけど、ふとこれはセクマイ待望の「セクマイが主役のただの漫画」なんだなって思った。 著者がBL作家の女性だからついBLのくくりで認識していたけれど、これは「BLコミック」でも「ゲイ漫画」でもなく、「料理漫画(主役はゲ…

中村安希『リオとタケル』集英社インターナショナル

アメリカで成功を収めた演劇デザイナーカップルのノンフィクション(プライバシー保護のためフェイクあり)。 タケルは24歳で渡米した1949年生まれの日本人、リオは1953年ワシントン生まれの白人。 1976年に出会ってからずっと一緒に生きてきた。 著者はふた…

一色まこと『ピアノの森』講談社

待合室においてあったモーニングを読んだら、「ピアノの森」が素敵なことになってた。 何冊かあったうちの一冊なので最新号ではないかも。 コンクールの結果発表の回。 たぶん単行本にはなってないと思うので一応たたんでおきます。 ストーリーにかんするネ…

森奈津子『姫百合たちの放課後 』早川書房

アホでエロなレズビアン小説集。再読。 基本アホ。一皮むいてもアホ。 でもマイノリティの気持ちがぎっしり。 今現在の本気の思いを大人目線でわかった風に「誰でも通る道よ」なんてあっさり片付けてしまうことのひどさは、している側にはなかなかわからない…

パトリック・ジョセフ・リネハン『夫夫円満』東洋経済新報社

大阪・神戸アメリカ総領事館総領事(2011-2014)のパトリックと、その夫エマーソンの夫夫の半生記。 生まれも育ちも年齢も違うふたりの愛と、ゲイライツが主題。 文化的背景や感覚が私とは違うから違和感があったり、ふたりともゲイだからゲイ以外には疎いよ…

スーザン・クークリン『カラフルなぼくら』ポプラ社

アメリカで暮らす十代のトランスジェンダー六人へのインタビューをまとめた本。 トランスなのに副題がLGBTなのは、TのLとGとB(とI)の子たちの話だから。 他国の十代の生き様や考えを知ることができる良書。 語られるのはトランスの話だけど、この子たちが…

東小雪『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』講談社

『ふたりのママからきみたちへ』の筆者のひとり、東小雪さんの手記。 ということだけで手に取ったら大変だった。 でも納得もした。 こういう経験をして、乗り越えてきた人だからこれだけ考えられるんだろうとか、そういう部分で。 セクマイの本棚にいれるか…

水谷フーカ 『14歳の恋』3 白泉社

「大人っぽい」14歳どうしの思春期恋愛漫画。 主人公カップルもかわいいけど脇役好きだー。 まずは志木さん!今回もかわいいな! 自分で思ってるよりずっといい子でヤンデレになれない子。 実るかつったら(相手が強固なカップルだから)そりゃ難しいけれど…

中村明日美子『片恋の日記少女』白泉社

王道じゃない恋のお話の短編漫画集。絵が独特で面白い。マリオネットみたいな印象。バランスが悪い?というか、人のバランスとは違うけれど均整は取れている。 最初の『漢のブリ大根』がトランスジェンダーの子の話。実家を出て親には告げずに女子(というか…