那木渡『恋愛不行き届き』竹書房(ネタバレあり)
ずっと互いに好きというか性的な目で見てたけど、なんやかんやでこじれまくるふたりが主役のBL漫画。
クローゼットなゲイ(自覚あり、自覚なし)の大暴走な話なんだけど、そうならざるを得ない背景がきちんと存在しているのが面白いと思った。
あとがきに「(脇役も)皆見た目ではわからないギャップや悩みをかかえながら人生を謳歌しているんだといつもコマ外に想像しながら描いていました。」とある。
あとがきを読む前から、そうやって描いてくれてるんだなってわかる描き方だった。
県議会で同性婚を争うとか、変化までに3年じゃ短すぎるだろとか、私が主人公の友達だったら絶対そいつと別れろっていうわとか、いろいろ思う。
でもこれだけ当たり前に多様な人が出てくるって本当すごい。未来的。
作者の描き方もさることながらこれが理解される世界にかわってきているんだと思えて心強い。
共感できなくても、文脈が理解される程度には世界はすすんでる。
ちょっと前ならこういう風には描かれないよなって要素はたとえばこんな感じ。
・ひっきりなしにやってる主人公カップルの濡れ場がDV(そもそもはじまりがデートレイプ)でロマンチックじゃない。
・内なるホモフォビアによる攻撃
・子供がゲイだなんて思いつかないから知りもしないとこかの「ゲイ」を否定する親、
・女とやりたがらないと「ホモかよ」って言われる
・男とセックスできると確認しようとするベビーなレズビアン
・否定されてきたからいい大人になってからようやく初めての恋愛をはじめるゲイ
・俺がゲイだからってうちの弟はゲイじゃないから変な想像しないで
とか。
ストレートな表現もあればさりげなく紛れ込ませたものもあるしやんわり伝えてくるものもある。
だから、読んでいる最中はけっこうきついとこがあったんだけど、読み終わってこの本がある現在が幸せだなって思った。