中村明日美子『片恋の日記少女』白泉社
王道じゃない恋のお話の短編漫画集。
絵が独特で面白い。マリオネットみたいな印象。
バランスが悪い?というか、人のバランスとは違うけれど均整は取れている。
最初の『漢のブリ大根』がトランスジェンダーの子の話。
実家を出て親には告げずに女子(というかオカマ)として暮らしている主人公の家に、お父さんが押し掛けてくる。
果たしてお父さんはこれが息子だと気づいているのかいないのか。
トランスだからこその話ではあるけれど、トランス話じゃなくて、トランスのこの子の話。で、いい親子の話。
他の話もメインストリームから外れたところにいる人たちの話で、みんな描き方がすてき。
姉ちゃんが出会い系で知り合った男と初デートらしいので、勝手に姉ちゃんのふりをして男に会いにいく弟の『とりかえばや』が可愛くて好き。
表題作の、見た目で判断されちゃう女の子もすごくかわいい。
勝手に思われるのはキモいよねってのと、でも思う気持ちが悪いわけではないよねってのと。
後ろ暗いような、負い目に感じてしまうような恋心へのヘイトがまったくない。
こういう理由でこうだから許容してくださいみたいな言い訳も一切ない。
この子たちはただこの子たちだというだけの話。
この軽やかさは素敵だ。