室生犀星『舌を噛み切った女 またはすて姫』新潮文庫
室生犀星の時代物短編小説。
芥川の平安ものとか坂口安吾の『桜の森の満開の下』とか、あの辺の雰囲気。
山賊の中で育った女が都の女と出会う。
なんとなーく雪の女王の山賊の娘を連想した。
あのこが悲しく大人になっちゃったようなお話。
野郎ども、とくに庇護者のおっさんが胸くそ悪い。
昔の男が書いた話だし仕方ないかもしれないけれどこの男目線ときたらこの野郎、と思いながら読んでいた。
が、思いがけずヒロインが格好よかった。
冷静な目を残しながら感情で動いて、自分の足で自分の道をゆく。
胸のすくような展開でこそないけれど、あがいて生き抜く強さが好きだ。
そんで、女の子同士の関係を汚さない書き方が好きだ。
描かれなかったその先に、お姫様と末永く幸せにくらしました、めでたしめでたし。
という結末を望みたい。