よしながふみ『きのう何食べた?』講談社
前から知っているし読んでいるんだけど、ふとこれはセクマイ待望の「セクマイが主役のただの漫画」なんだなって思った。
著者がBL作家の女性だからついBLのくくりで認識していたけれど、これは「BLコミック」でも「ゲイ漫画」でもなく、「料理漫画(主役はゲイ)」なんだ。
ゲイであることはカッコ内に記すくらいの重要度で、ジャンルとしては「料理漫画」。
もちろん、主人公がゲイだからゲイなエピソードはある。
それは主人公が高校生の恋愛漫画にテスト勉強のエピソードがでてくるのと同じことだ。
主人公の生活のなかで大事な要素だから大事に扱う。
でも大きな要素だろうとページを割こうと、それがメインテーマにはならない。
高校生が主人公だからといって「高校生漫画」にはならないように、
セクマイが主人公だからといって「セクマイ漫画」にジャンルを限らなくていい。
推理ものや恋愛ものや歴史ものの主役が(わき役でもいいけど)ただセクマイなだけってのは素敵だ。
ヘテロもの作品の多くにヘテロである必然性がないように、主人公がセクマイである必然性なんて必須のものじゃない。
まあ私はゲイじゃないのでリアルという意味での普通度はわからないけれど、特別じゃないという意味での普通度はあきらかに達成している。
こういうことに気づかないくらい普通に、「よし普通に書くぞ!」という気負いを見せずに普通のゲイが主人公の漫画を描いてくれる人がいて、載せる雑誌があって、読んでる私も普通さに気づかずに普通に読んでいる。
幸せなことだ。