Booking.com: CM 男達がおいしい食を求める旅
Booking.comの CM 大好き。
若くもない男ふたりがいろんな場所で「うまかー」って言ってるやつ。
全力でおだやかに楽しんでいるのがかわいくて見ると幸せな気分になる。
男ふたりなのに女あさりも冒険も馬鹿騒ぎもせず、ただひたすら食べて満足げにしている。
男ふたり旅って、一昔前の女おひとりさまみたいなもんなんだと思う。
『正当な』理由をつけないと妙に勘繰られたり変な目でみられたりする。
だから、どんな関係だとかモテないからしかたなくみたいな言い訳を付けずに、ただただ幸せそうにしている様子が流れるってのは新鮮だった。
場所ごとに服装が変わるのも楽しんでいる感満載で、タイトルの『食の旅』すら大義名分にせずに満喫する姿が描かれているのが嬉しい。
手塚治虫 『MW』 小学館
ページのわりに内容がものすごく濃い。
主役の男二人がほのめかしじゃなく性的な関係を結んでいるので、社会派な内容だけどセクマイ面の感想だけ書きます。
古い本だから、必ずしもセクシャルマイノリティが肯定的に描かれるわけじゃない。
現在のセクシャルマイノリティがうんざりして闘っている『セクシャルマイノリティ(=ゲイ&MtFおよびレズビアン)キャラは悪役か生き残らない』系の話だし、二人の関係も全然幸せじゃないエログロな描写になっている。
でも二人ともちゃんと人間だ。
かたっぽは極悪サイコパスな大量殺人者で、もう片方は口だけ立派な偽善者でチャイルドマレスターのクズだけど。
…なんでこんなひどいキャラクターなのに魅力的だったり理解できちゃったりするんだろうな。不思議。
で、こいつらは救われないけれども、ほんのすこし行き掛かりにすれちがうだけの脇役に格好いいレズビアンがでてくる。
しかも夫婦的存在の彼女持ち。この人たちは普通に幸せに力強く生きていけそうなんだよね。
同性愛=モンスターな話ってわけでもないってところに驚いた。
メインの男二人の関係は異常性の一要素だけど、こっちの女性の関係は強さと聡明さの理由になっている。
男役女役がきっちり決まっていたり、謎の想像ゲイバーみたいなところがでてきたりするのは時代かな。
こういう、理解の助けにはならないかもしれないけれど気づいた当事者の命綱になるような作品を見つけるたびに、セルロイドクローゼットを観返したくなる。
higirisbookshelf.hatenablog.com
枝屋初 『ばけむこ』
セクシュアリティゆらぐなめくじファンタジーな和風web漫画(?)
説明がへたすぎて意味が分からないとおもうけれども、そういう話!すごい!
ちゃんとなめくじがなめくじ!かたつむりもでるよ!
かたつむり好き的にもマイナーなセクマイとしてもうれしすぎるテーマと描き方。
なにこれ私のために描いてくれたの!?
主人公は、娘が呪われる家に生まれ、男の子として育てられた。
それはそれとして多分本人の性質的にも性自認があいまい。
で、その子がたまたま遭遇して婿入りすることになった人外はなめくじ姫(男子にもなれる)
生物学的な性も性自認も性指向もあいまいで、というかどうでもいいような具合のあいまいさをはっきり描いているってのがまた素敵。
なめくじやかたつむりは雌雄同体だから男女どちらでもないしどちらでもあるけれど、このなめくじの人型は男バージョンと女バージョンがある。
それも、どちらかにしなければ気が済まないから男版女版があるんじゃなくて、人型になったときに男性と女性をそれぞれモデルにしたからそうなった、という説明がある。
その辺の描き方すごく好き。
血なまぐさい呪いが出てるわりに雰囲気が静かで落ち着いていてぼーっとゆったりしてるのもなめくじっぽくて好き。
嬉しいな。最近の進歩に自分の感覚が全然ついていってない。
天才とか先見の明のある人とか観察眼のありすぎる人の表現にたまたま映り込んだんじゃなくて、自覚的にAとかXのセクシュアリティを描いた作品がどんどん出てきている。
時代は進歩するんだってことを肌で感じられるのが嬉しくてしかたない。
まだ序盤だけど楽しみすぎる。お金払って紙の本を買いたい。
追記:2018/01/21
コミックス発売するらしい。
小野ハルカ 『桐生先生は恋愛がわからない。』 小学館
まったく読む気のおこらないラノベ風タイトルのせいで萌え系とかハーレム系とかの恋愛漫画かと思ってたら、まさかの王道ハーレムに疑義を呈するAセク漫画だった!
主人公は生れてこのかた恋愛感情を抱いたことも恋にあこがれたこともない人。
アセクシャルかもしれないけどそうともいいきれるほどの確信もない。
この辺の迷いがリアルにアセクシャルっぽい。
というか、同性愛者かとも思ったけど違うみたいだしもしかするとアセクシャルやノンセクシャルとか✗ジェンダーも近いかもしれない、と自己を分析する主人公がでてくる漫画を出版社が出す時代がこんなに早くくるなんて数年前には想像もできなかった。
私はアセクシャル(多分)が出てくるだけでもうありがとうございますな状態なので正常な判断ができないんだけど漫画としても面白いと思う。
社会派漫画が描きたいけれど大人の事情で大嫌いなハーレム漫画を描いたら大当たりしちゃってストレスだけど大人だから真面目に仕事するよ!っていう主人公がとても常識的で好き。
で、乙女ゲーでいうところの攻略対象な男子もいい感じだからくっついちゃってもいいような気がしちゃうのが怖い。
アセクシャル的にはアセクシャルをつらぬいてほしいんだけど、どっちに転んでも面白そうだからどうしよう続きを読むのが怖い。
男子たちにも幸せになってほしいけど、アセクシャルがヘテロセクシズムに飲み込まれて教化されちゃうパターンは読みたくない。
ああなんだか昔のゲイやレズビアンが自分たちの出てくる本を読み漁ったり忌避してた気持ちがようやくわかった気がする。
今の百合やBLみたいにジャンルとして成立するほどたくさん作品があれば、ハッピーエンドもバッドエンドも気に入るのも気に入らないのもあるのが当たり前だ。
けど、めったにセクマイが出てこない世界では一作品の重みがでかすぎる。
どうなるのかなこれ、完結してるっぽいけどネタバレはさけたいからレビューも読めないわ。
追記
つづきを読んでみた。
higirisbookshelf.hatenablog.com
『RENT』20周年記念来日公演
年末に、RENTの来日公演を観てきた。
RENTは90年代アメリカを舞台にしたミュージカル。
ボヘミアンな若者たちの1年間…なんていえばいいんだろう。あらすじ難しい。
とにかく曲が良い。
『I’ll Cover You』(ゲイカップルのものすごくかわいいラブラブ曲)と『Take Me Or Leave Me』(レズビアンケンカップルの痴話喧嘩曲)が大好きで一時期延々とリピートしてた。
もちろんほかの曲も好き。
ミュージカルはかけあいの歌がいっぱいあるから楽しい。
ここんとこずっと自分を楽しませるためだけの買い物ってのをしてないなと思ったところにCMが流れてチケットを衝動買いした。
ローソンでチケット発券してからレジでお金を払うまでかなり逡巡したけど。
あんまり安いもんじゃないし、期間の後半で買ったから一番安い席が売り切れてたし。
いやこのくらいいいじゃない、このくらいの贅沢は許される、って言い聞かせて思い切って買った。
結論、ケチらず一番いい席買えばよかった。表情が見える位置で観たい。
ついでに映画版DVDも買っちゃった。
今回は20周年記念公演ということでオリジナル演出版。
電話とかハロウィンとかクリスマスベルがリーンリンとか聞けて幸せ。
あとオーバーザムーンのミッキーマウス声まねとか。
RENTはオリジナルキャスト(と映画キャスト)が良すぎるから、ほかのキャストに不満を持っちゃいそうで見る前は若干不安だった。
実際そっちよりは落ちるなと思っちゃったけど、それでも満足した。
みんなで歌ってるところの美しさに感動する。
トムコリンズとジョアンの人が良かった。あと『Will I?』のソロと、『Seasons Of Love』でメインを歌ってた女の人と、ホームレスの子供?というか小さい人。ベニーもよかった。
ボイスメールのマスコミの人の邪悪な感じでキャハ☆っていうテンション好き。
せっかく目の前にナマの人がいるのに見逃すのがもったいなくて、字幕はほとんど見てなかった。
でも、あらためて見ると歌詞にも心打たれる。
今を生きるって刹那的な意味じゃなくて、今をちゃんとしなきゃ過去も未来もないって風に聞こえた。
『 Will I?』を聞くと泣きたくなる。
ものすごく久しぶりに舞台を観にいって、やっぱいいなって思った。
おかげでRENTはもとよりエリザベートとかいろんなミュージカル曲が頭をまわってる。
お正月特番的な舞台のテレビ放送も録画しちゃった。どうせ見る時間ないのに。
まあいいや、楽しい。
Rent (1996 Original Broadway Cast)
- アーティスト: Anthony Rapp,Adam Pascal,Jesse L. Martin,Idina Menzel,Taye Diggs,Wilson Jermaine Heredia,Aiko Nakasone,Kristen Lee Kelly,Daphne Rubin-Verga,Jonathan Larson
- 出版社/メーカー: Dreamworks
- 発売日: 1996/08/27
- メディア: CD
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- アーティスト: サントラ,ジョナサン・ラーソン
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2006/04/12
- メディア: CD
- 購入: 2人 クリック: 4回
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セクシュアリティの多様性を踏みにじる暴力と虐待―差別と沈黙のはざまで (アムネスティ・ジェンダーレポート)
好きな服を着るとか、好きな言葉づかいでしゃべるとか、好きな人と双方合意の上でつきあうとか、そんな「罪」をおかした人たちがどんな目に合わされたのかをつづったリポート。
差別なんてないよとか言ってる人や事情がわかっていない人にこそ読ませたい。
ヘコんでるセクマイにはオススメしない。
日本で生きるのだって厳しいのに、さらに厳しい現実がわんさかあるって分かっちゃうから。
セクマイは罪じゃないけど、たとえ罪悪だったとしてもここまでしていいはずがない。
書いた日:2007年9月29日
セクシュアリティの多様性を踏みにじる暴力と虐待―差別と沈黙のはざまで (アムネスティ・ジェンダーレポート)
- 作者: アムネスティインターナショナル,AI=,アムネスティインタナショナル=,アムネスティインターナショナル日本ジェンダーチーム
- 出版社/メーカー: 現代人文社
- 発売日: 2003/09
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 14回
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今日はこの本を世界にまきちらしたい。
諫山創『進撃の巨人』講談社
今更ながらの話題作。
14巻まで読んだ。
タイトルは知っていたけれど、おおきいもの(物理的な意味じゃなくて)と闘う系の話にはあまり食指が動かないので興味を持たずにきた。
が、置いてあったのをなんとなく読んだら面白かった。
キャラクターのそれぞれに大事なものがあって(大事なものがわからない人もいて)、みんな必死。
この人だけと決めてたって他も大事だったり、その逆もあったり、本当は弱かったり優しかったりする人が闘ったり、信用させるために自分を開示したり隠したり、うさんくさくても信用すると決めたり、大事なのに裏切ったり、いろいろ。
そういう中でなんとか人とつながって生き抜いていく。
で、セクマイ読み。
ユミルとクリスタという女子ふたりが予想外にガチだった。
自分を大事にできないのに(できないゆえに)自分しか見えない子たちが、大事な人を見つけて強くなる。
強くなったと思ったら、迷いが生じて弱くなる。
少年漫画でこの本気の想いが最初からきっちり描かれていることに脱帽した。
ストレートな告白もいいけど私もケガしてんだけどってとこがかわいすぎた。