馬脚チラリズム

馬脚チラリズム

セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 静山社

 

ハリーポッター五年目。
過去あり大きな動きありでもりだくさん。
早足のウサギたちが転びまくり、着実にすすんできたカメたちのかっこよさに(読み手が)救われる巻。
老いも若きも男子は危機的傾向。女子たくましい。

 

きっとここは物語の中ですごく重要な時期だ。
でもしんどい。いろんな意味で目をそらしたい。
洋の東西を問わず十代半ばってのは恥ずかしい失敗をする時期らしい。

 

この巻のハリーはまさにそこにいる。
児童書の主人公にあるまじき陰湿なすさみ方は読みすすめるのがつらい。
はてしない物語http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/B000J7LMGKくらいつらい。
でも「物語の主人公」ではなく「エネルギーを持て余している上にトラウマまっさかりでケアも受けられずに閉じこめられている15歳男子」なら、当たり前の愚行だ。むしろ温厚で平和的。
それでもやっぱりイライラしちゃうから、成長速度が違うロン(安心の鈍さ)やハーマイオニー(達観の境地)やほかの子たちに安心する。

 

大人は大人で、ひどい経験から抜け出して安定を得たら躁鬱状態になっちゃったり、
完全な存在みたいに思われていても「ひと」だったり、
闘う勇気のある人だって不安だったり、
昔の苦痛を忘れられなかったり、
情に流されたりしてる。

それでも大人は完璧じゃない自分を抱えたまま、最低限の仕事はこなすとか、フォロー体制を整えるとか、仲間を信じるとかしている。


名前と性格のわかる屋敷しもべ妖精の3人目がでてきた。
種族の傾向と個別の性格がきちんとあるのがムーミンぽい。
マイノリティを出すときのフェアな描き方だ。

 

ロンのママとやさしいルーピンはうまくやっている様子。
だけどそれはルーピンが「良い人間」にカウントされているだけで、ルーピンが狼人間として生きていることをママはすぐに忘れる。
ルーピンを好きなだけで偏見がとりのぞかれたわけではないのだと、たった一行で思い知らされる。すっごいなあ。
『ブリギーダの猫』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4896423445のスタンチャを思い出す。

 

シリーズ感想

1『ハリー・ポッターと賢者の石』

2『ハリー・ポッターと秘密の部屋』

3『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

4『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

5『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

6『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

7『ハリー・ポッターと死の秘宝』

 

 

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 ハリー・ポッターシリーズ第五巻 上下巻2冊セット(5)

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 ハリー・ポッターシリーズ第五巻 上下巻2冊セット(5)

 

 

ブリギーダの猫

ブリギーダの猫