馬脚チラリズム

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セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 静山社


ハリーポッターシリーズ、二年目。
差別や違いのテーマが更に鮮明。

 

「特別なハリー」の葛藤が、周囲の反応への戸惑いから自分自身への疑問にシフトしてきた。
そうであるからといって、必ずしもそうならなくてもいい。という部分に泣きたくなる。
昔は気づかなかったか、他人事として読んでいた部分だ。

 

みんなを心配するロンは優しくていいやつ。
ハーマイオニーとのケンカが子供っぽくてかわいい。
ハリーがちょっと引いた態度なのはまだ完全にオープンになれてないんだろうか。

ハグリッドは「違うもの」と自分の間に線引きできない。
だから良い人なんだけど、それだけじゃうまくいかない現実味がきつい。


あっさり手のひらを返す「みんな」とか、よく考えたら怖い部分が今回もけっこうあった。

たとえばロンの家での庭小人(魔法使い的には「害虫」の認識)の駆除を初めて見たハリーはぎょっとする。でもすぐに慣れる。

庭小人を駆除するウィーズリー家はコミカルに、しもべ妖精を虐待するマルフォイ家は冷酷にみえる。
でも何が違う?庭小人を傷つけるつもりのないロンも、酷使して当然のマルフォイも、そうされて当然のものとして「それ」を扱う時点で同じ線上にいるんじゃないか。

ロンはスクイブ(魔法一家にうまれたのに魔法が使えない)は笑うようなことじゃないと知っている。

だけど隠れゲイのホモフォビアみたいな状況に気づいたら、魔法使えるロンは普通に嘲笑する。

 


深読みしようと思えばいくらでもできちゃうな。
なのに素直に読んでもおもしろいのがすごいところ。

 

ハリー・ポッターと秘密の部屋

ハリー・ポッターと秘密の部屋

 

 

訳がよくなってる。一冊目は慣れてなかったのかな?
「出目金」がなくなって「ギョロ目」がでてきた。たぶん同じ言葉。

「ミス・グレンジャー」「ミスター・ポッター」は気にならないけど「ポッター君」「グレンジャーさん」だと変な感じがする。
「ポッター、ミス・グレンジャー」もあるな。
一巻の「ポッター氏」「グレンジャー嬢」よりはずっといいけれど。
言葉に忠実に訳せば書きわけるのが正しそうだけど、「さん」も「君」も男女に使える日本語のなかで良き教育者のダンブルドアがわざわざ呼びわけていると違和感がある。
後書きで「女史」を使っているから、訳者はその辺が気にならない人なんだろうけど。

 

 

シリーズ感想

1『ハリー・ポッターと賢者の石』

2『ハリー・ポッターと秘密の部屋

3『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

4『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』

5『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

6『ハリー・ポッターと謎のプリンス』

7『ハリー・ポッターと死の秘宝』