J.K.ローリング 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 静山社
ハリーポッター三年目。
両親の過去が少しずつ見えてくる。
庇護者が万能でないことに気づく成長期。
最初の方でハーマイオニーの誕生日にちらりと触れるセリフがあった。
そういえばハリーがもらうシーンはたっぷりあるけれど、あげるシーンはほとんどない。
プレゼントを選ぶのも、贈りたい相手がいてはじめて経験できる「幸せな出来事」なんだけどな。
これだけ冒険しているのにハリーが受け身なイメージなのは、(ヒーロー行為は別として)「してあげる」描写が少ないせいかもしれない。
傷つけない配慮はあっても喜ばせるための気遣いがあんまりない気がする。
そのシーンがないだけで、きっとあげてるんだろうけど。
シリウスの怒りに、『溺れるものと救われるもの』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4022630221を思った。
正しい人が好きだけど、ここまで強く正しく生きられる人がどれだけいるのかな。
もっとも、この人の場合は正しさというより、自分の大事なものを正当にあつかいたい気持ちの強さっぽいけど。
「たったそれだけ」で排除されるマイノリティがさらりとくっきり描かれているのもすごかった。
余裕のある社会の中では違いはただの「違い」でしかない。
でも余裕のない社会では攻撃の理由になる。
ハーマイオニーや先生たちでさえ疲れてるときは情緒不安定になるんだから、元から不安な人ならなおさらだ。
異質なものを排除する環境が整った場所でのみ、アウティングは有効な攻撃になる。
- 作者: J.K.ローリング,J.K.Rowling,松岡佑子
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 2001/07
- メディア: ハードカバー
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この巻に限らず、主役側とはいえグリフィンドールびいきすぎるのは気になる。
これだけスリザリンが大っぴらに嫌われているのなら、スリザリンに入った子はそりゃぐれる。
属する寮が出自と同じように差別の理由になってしまうのはわざとだろうか。
この先でどうにかなるといいんだけど。
シリーズ感想