馬脚チラリズム

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セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

三井マリ子『ノルウェーを変えた髭のノラ』明石書店

本に、ノルウェーのクウォータ制について書かれていた。

クウォータ制というのは、 ある場所にいる人の属性の比率が不平等によって偏っているなら それを是正するよう義務付けましょうという制度。

たとえば国会議員が男性ばかりだから女性議員を○%以上にしましょうとか、 いい大学の学生が白人ばかりだから有色人種枠を設けましょうとか、その類。

ウィキペディア:クウォータ制

 

ノルウェーを変えた髭のノラ―男女平等社会はこうしてできた―

ノルウェーを変えた髭のノラ―男女平等社会はこうしてできた―

 

 

ノルウェーは男女平等の先進国だけれど、 それでも経済界はながいこと男性優位だった。

自然にまかせてはなかなか上部に女性が増えないので、 民間企業の重役にも4割以上は女性を入れましょう (というか片方の性が4割以下にならないようにしましょう) という法ができたのが2003年。

JANJAN 現地ルポ「ノルウェー民間企業の取締役は4割が女性!!」の背景を見る

 

当初は「そこまで規制するの?」 「差別はしてないけど使える女性がいないんだからしかたない」など、 それなりに反対はあったらしい。

そこで推進派は、 経済界の重鎮たちが語り合う写真に「わー多様性に溢れたメンバーですねー」みたいなコピーをつけたキャンペーン広告をうった。

写っているのはみんな男性。

 

つまりこのキャンペーン広告は、見た人が 「改めて見ると本当に男性ばかりだ。なんか変!」 と感じることをねらっている。

上に男しかいないことを当たり前だとみなす社会ではこのキャンペーンは意味をなさない。

この制度を思いついて諮って実行できることもすごいんだけど、 この広告がキャンペーンとして成り立つ (=皮肉が皮肉として通用する、違和感を期待できる)ということがすごい。

 

ひるがえって、先週見た円高のニュース。

前回の円高の時と、現在の映像が続けて流された。

古い映像に私が感じたのは、 男性しかいないことではなく設備と服装の古さへの驚きだった。

現在の映像が流れてようやく男女比に気づいたけれど、 むしろ「うわーおんなのひとがいっぱいいるー」と、現在の女性率に驚いた。

それすら女性ばかりというわけではないのに。

不可視にされている集団が「意外といる」ときの人数は いて当然の集団が「少ない」ときの人数よりも少ない。