桐野夏生『グロテスク』
天上には蛍光灯が埋まっていて、あたしの顔色を青く冴えなくする。だから、いつも赤い口紅を塗っていなくてはいけない。口紅とバランスを取るために、アイシャドウも青く。そうなると目と口だけが目立つから、眉も濃く描かなくてはバランスが取れない。どんどんエスカレートするバランス感覚。バランスを取るのは難しい。でも、バランスを取らないと、この国では生きていけない。
この本は何度か挑戦して、そのつど挫折していたんですが、 今回ようやく読み終えました。
なぜ挫折するかといえば、最初の章ですよ。 怖い。気持ち悪い。気持ち悪い。
このお姉さんが嫌だ。
同じように壊れている人の視点に立つ文章でも、 京極夏彦なら共感できるんだけど。
なんでだろう。男女のドロドロが苦手だからかもしれません。
あとは卑屈さかな?
弱いのに、そのことを自覚していないのが嫌なのかもしれません。
というより、感づいているのに気づかないふりをして逃げているのが嫌なのかな。
佐藤和恵がかわいそうで、泣けそうなくらいかわいそうだけど、 実際こんな風な人がいたら、目をそらして逃げると思う。
そう思ってしまうのが悲しい。
助けてあげようなんて思うのはおこがましいけれど、 誰からも救いを得られないんだろうと思うと悲しい。
「かわいいオンナ」は女であるが故に男よりも下位の存在にされる。
「男とはりあうオンナ」は女失格であるとして下位の存在にされる。
だから完璧なのは、男とはりあえるかわいいオンナかといえば そんなことはなく、そのための努力にどれほどの意味があるのか。
しかしそのための努力をしなければ、無条件に下位に置かれる。
下位に甘んじることも、上位に行くこともできなければ、 どこへも行けず溺れてしまう。
うーん。救いがないなあ。