東小雪+増原裕子 『ふたりのママから、きみたちへ』 よりみちパン!セ
子供を生み育てることを検討中のレズビアンカップルが書いた「レズビアンとは」の本。
それだけでなく、マイノリティとして生きる、みんなが生きやすい多様な世界のための本でもある。
セクシュアリティのことも、セクシュアリティだけじゃない生きにくさのことも、易しく優しくかいてある。
このカップルのパートナーシップは素敵だ。
レズビアンってなあに?女友達を好きな気持ちとどう違うの?といった初歩的な話から、
表面的な知識だけじゃない、自分たちがしっかり考えてきた悩みまでたっぷり書いてある。
優しくわかりやすい入門としても、一歩踏み込んで考えるための手引としても使える良書。
ふたりのママから、きみたちへ (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ)
- 作者: 東小雪+増原裕子
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2014/01/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (5件) を見る
著者たちは、当事者として悩みぬく姿を書き出してくれる。
読む側としては、マイノリティにこうまで考えこませてしまう社会の在り方を考えなきゃダメだと思う。
案ずるより産むが易しを許さない世の中はおかしい。
著者たちが、たくさん悩みながらも生まれることを寿ぐ気持ちを手放さないようにしてることにほっとする。
子供を育てるためにどんな備えが必要だろうとか、
マイノリティの子として生まれてくる子供がいじめられたらどうしよう、とか
でもマイノリティだから生まれるべきじゃないってのは絶対に間違ってる!とか
種を「選ぶ」違和感、でも肌の色をそろえたほうがいいのか?とか
色々なことを真剣に考えているから、聞きたいことや言ってあげたいことがたくさん出てくる。
私は小雪さんと同世代だけど、セクマイとしての経験があまりにも違っていて愕然とした。
高校生の頃ポジティブな情報が少なかったという言葉を読んで、「そうか?結構あったよ?」と思った。
私はその頃それなりに知識を得ていたし、結婚圧力は遠くおぼろな話だった。
だから最初は、私はそんなに切実じゃなかったから平気だっただけなんだろうか?と考えたりした。
でも、「田舎と都会」の差がある、都会には当時すでに若者向けのNPOもあったらしいと書いてあるのを見て、ようやく自分が恵まれていたんだってことに気付いた。
私にはアクセスしようと思えばいつでも手が届く距離に場所も情報もあったからアクセスしなくても平気だった。
アセクシャルの私にとってはLもGもBもTも他人事だから肯定するのも簡単だった。
私が、男子だった先輩が徐々に女子になっても特に注目されない私服の高校に通い、なんの気負いもなくシスジェンダーヘテロの同級生を誘って『ハッシュ!』を観に行っていた頃、金沢にはこんなに孤独な女の子がいたなんて。
今更それに気づいたことがすごく悲しい。
自分がマジョリティ(強者)の立場の時には他人のマイノリティ性に鈍くなってしまうんだってことを改めて知ってしまった。
その頃のひとりぼっちの子供を思うとやりきれないけれど、大人になったその子が今幸せだと書いてくれていることがとても嬉しい。
この本のなかにはたくさんの困難が描かれているけれど、それでも生きていけると思えるだけの希望がたくさんつまってる。
子供に親をどう呼ばせるかの話には共感できない。
母の役がふたりいても、呼び分けしなくていいんじゃないかな。
おじいちゃんがふたりいる人はたくさんいるし、家の中におにいちゃんやおねえちゃんが複数いても別に混乱しないもの。
「おねーちゃーん」「「どっち?」」「花子ねーちゃんのほう」で問題ない。
そんなに「特別」なこととして考えなくていいと私は思う。もちろん分けてもかまわないけど。
higirisbookshelf.hatenablog.com