馬脚チラリズム

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セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

50歳からのふれあいボランティア~夫や子供に尽くすだけが人生じゃない!

いつも利用する図書館で、いつもいつも目が行ってしまう背表紙があります。

タイトルが気になるだけで、読んでいませんから内容はわかりません。

だから今回は書評ではなくタイトル評です。そこのところはお間違いなきように。

 

主婦ボランティア研究会

『50歳からのふれあいボランティア~夫や子供に尽くすだけが人生じゃない!』

 

“夫や子供に尽すだけが人生じゃない” ⇒だからボランティアをしよう!

って、なんだかなあ。釈然としない。

 

アレか。女は三界に家なし。

「女は幼は親に従い、嫁しては夫に従い、 老いては子に従えと言うけれど

 そんなのは今風じゃない。だから他のことをしよう。

 そうだ、夫や子どもに尽すのはやめて、他人に尽くそう」

というわけですか。

 

それじゃ、結局誰かに尽すだけの人生じゃないか。

 

本やタウンでデータを見てみましたが、そちらもなんだかなあ。

 

「困っている人のお世話をする」なかで、見失ってきた「自分探し」をする。そんな思いが大きな波となってやってきています。

とか、

本書は、ボランティアという世界に光を当てて、私たちが求めているものを引っ張り出してみました。もちろん、十人十色。様々な人がいろいろな活動にかかわり、いろいろな宝物を得ています。どの人もいきいきとした目で、毎日を送っています。

 

うーん。・・・宝探しに他人を巻き込むなよ。

「今まで夫や子どもに尽してきたけれど子どもは巣立ってしまったし、仕事人間だった夫とは会話も弾まない、ああ、近頃空虚だわ。そうだ、カワイソウな人のお世話でもしてあげよう!」

と受け取ってしまうのはうがちすぎですかね。

 

動機がどうであれやっぱりボランティアの力が必要なところは多いし、役に立つ。

自分のためっていう動機はアリだと思う。

でも、それを自覚せずに「誰かのため」とか言いながら自己陶酔するのは見ていて気持ちのいいものではないです。

 欲しいものは「他人の幸せ」とか「お役に立つこと」なんかじゃなくて「他人の幸せに貢献できた自分」とか「役に立つ自分」なんだってことは自覚しておくべきです。

 

「自分がやりたくて」やっているのに「誰かのために」なんて勘違いをしているとそのうち「せっかく私がこれだけしてあげたのに」と不満を感じるようになる。

 「してあげる」と思っていれば、報酬(感謝や尊敬)を要求するようになる。

欲しがるのはかまいませんが、相手に強要してはいけません。

このレビューやタイトルを見る限りこの本は「してあげる」精神に溢れているようにみえます。

 

で、ふと疑問に思いました。

「自分探し」がなぜ「尽す/してあげる」に直結してしまうのか。

それはこの本のターゲットである50代主婦層がずっと誰かに「尽す/してあげる」ことしか認められていなかったからではないかと。

そうやって生きることを強制されてきたから「誰かのために」尽すことでしか自分を認められず「誰かのために」「してあげる自分」しか見つけられないのかと。

 

少なくともこの本のターゲットでいえば年代的に専業主婦の方が多いですよね。

ちなみに出版されたのはいつだろうと見てみたら1999年。

・・・微妙に最近。99年の50代ですから男は仕事・女は家庭の性別役割分業が確立された団塊の世代です。

この年代の特に女性は割を食っているところが多いような印象です。

 

ボランティアがいけないのではありません。

それはいいことだし、きちんとやれば確かに役に立つ。

ボランティアをすることで、役に立って自分も活き活きできるなら、それはすばらしいことです。

 

ただ、家庭の空虚をうめるため「困っている人のお世話」をしてふれあいを満喫するとか、もっと言ってしまえば自分のうつろを埋めるために誰でもいいから誰かに尽すということは、やめたほうがいい。

せめて自分が求めているものがなんなのかは常に自覚しておいた方がいいと思うのです。

 

言い方の問題ですが、「無償の愛」のはずの子どもへの愛だって同じです。

子どもの幸せのためになにかをしているんじゃなくて、子どもが幸せになってくれると、それをみて「自分が幸せ」になれるからなにかをしているんじゃないでしょうか。

 愛が無償である必要はないし人の幸せが自分の幸せになることを、愛と呼んでもいいんじゃないかなあ。

 

50歳からのふれあいボランティア―夫や子供に尽くすだけが人生じゃない! (日経Life SERIES)

50歳からのふれあいボランティア―夫や子供に尽くすだけが人生じゃない! (日経Life SERIES)