馬脚チラリズム

馬脚チラリズム

セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

遥洋子『働く女は敵ばかり』朝日新聞社

 

私は感嘆した。ここまで通じない!男らしさが微塵の疑いもなく確立されている世界では「結婚したくない」と言ったら、「だから結婚できない」となった。いや、だから結婚したくないんだってば・・・と終わらなかった。この通じなさは感動ものだった。

 

遥洋子『働く女は敵ばかり』朝日新聞社

 

ああ、これ、あるよなあ。

一定年齢以上の独身者(特に女)ってよく言われるんだろうな。

結婚が間近にせまらない年齢でも言われるけれど。

 

「彼氏/彼女居る?」

「要らない」

「えーかわいそーなんでー?今度紹介してあげるよー」

「いや、だから要らな・・・」

「だいじょうぶだってー!きっとすぐできるよ!ガンバレ☆」

とかね。

 

なんで自分、はげまされてるんだろう。

要らないもののために、がんばりたくないんだけどな。

ゲイやレズビアンもこういうのは困るだろうけど。

現実には色々大変なこととか嫌なことがあるだろうとも思うけど。

「彼氏/彼女」の部分を「恋人」に変えれば ウソをつかずにごまかせるぶんだけうらやましいと思う。

恋愛至上主義に乗れないアセクシャル的にはかなりうっとうしいです。

いや、非Aセクがすべて恋愛至上主義者だとは言いませんけれども。

 

あ、恋人募集中の同性愛者は 異性しか紹介してくれない異性愛者の友人に上記の話をされても困るかな。

別に恋愛に限らず、「こうだ!」って信じきっている人には、話が通じない。

自分が信じている前提に当てはまらない人がいるってことが、わかってもらえない。

「したくない」っていっても「できない」だと思われる。

「できない」けどそれを認めたくないから カッコつけて「したくない」なんていってるのねかわいそうに、 ぐらいに思われるからなあ。

「したくない」人もいることを認めたくないのか 「できる」自分を優位に立たせたいのか。 このもどかしさ、伝えようとしている側がいくら感じようと 伝えられたくない側にはまったくわからないんだろうな。

 

ただ、「要らない」っていうのは、「欲しがれない」ということでもあるから そういうイミで「できない」のは確かにそうなんだ。

だから「できない」自分を認めたくないとか 少なくとも馬鹿にされたくないって気持は少なからず持ってしまう。

それって、自分自身がその価値観に染まってしまっているから感じるんだろう。

 

こういうことにイチイチがんばったり疲れたり、傷ついたりしてしまうのは 効率が悪いし面倒臭い。

それでもやってしまうのは 朝日新聞じゃないけど、やっぱり私は言葉を信じたがっているのだろう。

説明すれば(共感はともかく)理解できるとか ペンは剣より強しとか、そういったことを。

けれど伝える技量も聞き入れる器量も持ち合わせてはいないから 伝えきれず途方にくれる。

なにより、この人のように切実に伝えたい想いを持てていない。

いや、切実な想いを切実に伝えようとしていないところが問題なのだろうな。

 

必ずしもすべての意見に賛成というわけではないけれど この人たちを見ていると わかろうとしない世界と闘っている人たちがいるということに安堵する。

せめて、自分の信念を貫きたいがために 人の信念を受け止められない人にはならないように。

 

「あなたが幸せならそれでいいじゃありませんか。だからといって、あなた以外の生き方をしている人間が幸せを感じちゃいけませんか?」

 

しかしこのタイトルはイミわかんない。

働く女は敵ばかり (朝日文庫)

働く女は敵ばかり (朝日文庫)