メゾン・ド・ヒミコ
だいぶ前に見たんですが、そろそろDVDになるみたいですね。
非常に良かったです。以下ネタバレ注意。
舞台はゲイのための老人ホーム。
ってこの設定をみて、荒唐無稽なファンタジーと感じる人と、切実に必要だよね、あったらいいよねと思う人とで感想が変わってくると思う。
ゲイに・・・というより婚姻制度に乗れない人にとっては(婚姻できる人以上に)老後ってかなり不安なものだから。
愛じゃなくてもいいから、とりあえず婚姻にだけ乗っちゃおうかなと考える人がいるのも当然なくらいに。
少なくともそういうことを年頭においてみたほうが、寂しさが伝わりやすくなると思う。
で、映画自体ですが、なんとも綺麗な映画でした。
映像的にもそうだし、音楽も良かった。
そして役者ですよ。
ああ、この人たちはほんとに役者をやってる人なんだと思いました。
まずオダギリジョー。読めないです。
ミステリアスな美人として登場したかと思えば、あっさり汚れてみせるし、じーさんたちと歓談してたりするし、おまけにセクシー。
脱がなくても色っぽさをだすことはできるんですね。
普通そうにしてるけどヒミコが心配で、不安でしょうがないみたいな、本人が隠している心情を表すという難しいことをやってのけてます。
ちなみに私、柴崎コウが「あたし処女じゃないから」というシーンのオダギリの反応がすごく好きです。なんてかわいい顔をしやがる!
あとはヒミコといるシーン。
道に迷った子供みたいな顔で、でもしっかり恋人してる関係が大げさなラブシーンや愛の言葉ではないところで表現されている、というより「在る」。
その空気を担うもうひとりが田中泯。
圧倒的な存在感と、安易な馴れ合いを許さない誇り高さ。
病人なのに肉体が美しすぎる観はあるものの、この役はこの方でこそだよなと思う。
時間にしたらそれほど長く出てないと思うんですが、印象は強いです。
そして柴崎コウ。ぶっさいくでかわいい!
この人そんなに好きじゃないんですが、役者としてはかなり良いです。
元リーマンのおじさんとペアで可愛すぎる。
このふたりがぼつぼつと語るところがとても好きです。
ふたりとも真面目なんだけどなんかおかしい。バニー話のところとかですね。
でも私が店長ならこんな綺麗な子、一発採用ですよ!(笑)
他の人たちもそれぞれに良かった。
ホームのハデなじーさんたちも、マッチョなおじさんも、紳士なおじさんも働いてる子も良かったし、近所のバカガキも良かった。
あと外せないのは西島秀俊。淡々とセクハラしすぎです(笑)
女心がわかってるんだかわかってないんだか微妙だし「武勇伝」を人にしゃべっちゃうし、ダメです。やですこんな人。
なんかヘテロ男代表みたいな人だけど、でも嫌な描かれかたではない。
そこがまた憎らしい。
もっと憎憎しく演じてくれればヘテロなんてと憎めるものをそんな単純に片付けさせてはくれない。
西島とオダギリの会話がまたなんとも。
一見同じ系統の人間に見えて、すぐ隣り合って話しているのに世界が違う。
ごく薄い、けれどとてつもなく頑丈な紙一重で隔たれている。
絶対に理解しあえない感覚。
オダギリが柴崎に「羨ましいと思った。お前じゃなくてあの人(西島)が」というシーンもいいです。
好きだけど、どうしたってそういう「好き」じゃないってこと、あるものなあ。
「触りたいとこないんでしょ」とか切ないです。
あれは柴崎への優しさだし、ホンネでもあるんだけど“柴崎を抱ける西島”だけじゃなくて“女を抱ける男”ってものへの羨ましさもあるのかなと思いました。
ゲイに限らず、人と違う状態にあると、少数派である今の自分とか今の状況に不満はなくてもやっぱりたまに「普通」になにも考えずにいられたらいいのにって思うから。
「普通」の人がなにも考えていないというわけではないですけどね。
劇場で一回みただけなのでけっこううろおぼえなんですが良かったのはたしかなのでした。
DVDがでたらまた見たいです。