馬脚チラリズム

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セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

NHKプレミアムドラマ『弟の夫』(第1回)

NHKプレミアムドラマ(全3回)の一回目。
タイトルのとおり、亡き双子の弟の夫と会うことになったシングルファーザーの物語。

 

ゲイの話らしいのにLGBTドラマ、みたいなあおりがついていたから警戒しながらみた。
制作と宣伝は別とはいえ、原作がよくてもメジャーな場所で映像になると、変な改変をされることが多いから、「よくわかってない人が適当に流行りの現代問題をとりあげてみました」みたいなつくりになっていたら嫌だ。


けど、メインはゲイだけど『ゲイとかいう変な人たちの特別な話』じゃなくて家族という形を問う話になっていてほっとした。
ゲイがそこらにいる当たり前の人間として扱われていて、しかも『家族のかたち』というテーマの一要素として描き出されている。
ああー…すごいな。今日日的。国営放送でこんなのが見られる時代に生きてるよ。

 

いいなと思ったのが、主人公の偏見の度合いと言動。
完全ウェルカムの絵にかいたような善人じゃなく、ホモ死ねとかそんなのは異常だとか口走るほど差別的でもない。
性的な目で見られたらどうしよう勘弁してくれよとか失礼なことを考えてもそれを口には出さない。
同性愛について娘にあえて説明はしないけど口止めもしない。
戸惑いつつもお客さんとして礼儀をもって接している。
少年時代に弟にカムアウトされたときは「あ、そ、そうなんだ…」みたいな感じで否定しないようにがんばってる。

ホモフォビアうんぬんというより、この人の性格とか対人スタイルが良識的なんだと思う。
なんかこの、受け入れきれてないけど罵倒や否定をしない、だからぶつからないし向き合いきれない感じがリアルだなって思った。

 

「普通じゃない」弟を「普通の」兄が受け入れる話じゃないのもいい。
主人公は不労所得で生活していたり、離婚していたり、元妻と健全に面会していたりする。
婚姻した夫と妻と子供が同居して父は仕事母は家事およびパートみたいな「普通の」家庭じゃない。
マジョリティじゃない普通を生きているという点で、ひとり親家庭もゲイカップルもかわらない。
今後でてきそうな、その他の人たちも、もっと言えば、誰でも。

 

マジョリティの立場からマイノリティを観察したり分析したりする視点じゃない、マジョリティである自分を問う視点がある話を観られるのは幸せだ。

 

 


気になった部分がいくつか。


すごく常識的で気遣いのできる主人公が初対面の外国人にいきなりタメ口。
原作の漫画なら違和感がなさそうだけど、佐藤隆太がそういうキャラっぽく見えないからなんか横柄な感じがする。

 

40歳前後っぽい主人公の回想で、10代前半っぽい弟が「ゲイ」という言葉を使っていたけれど、当時でこの年齢(肯定的な情報が少ない上に自己肯定が難しい年齢)なら「ゲイ」より「ホモ」じゃないかな。
でも「ホモ」だと差別語だからダメなのかな。だとしたら普通にそんな配慮がなされているということになるのでそれはそれですごい。

 

夫の服装。虹色Tシャツはベタベタすぎて笑う。でも把瑠都がくそかわいいからOK。

 

徐々に打ち解けてきている今後が楽しみ。

 

www.nhk.or.jp

 

弟の夫 全4巻セット

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