手塚治虫 『MW』 小学館
ページのわりに内容がものすごく濃い。
主役の男二人がほのめかしじゃなく性的な関係を結んでいるので、社会派な内容だけどセクマイ面の感想だけ書きます。
古い本だから、必ずしもセクシャルマイノリティが肯定的に描かれるわけじゃない。
現在のセクシャルマイノリティがうんざりして闘っている『セクシャルマイノリティ(=ゲイ&MtFおよびレズビアン)キャラは悪役か生き残らない』系の話だし、二人の関係も全然幸せじゃないエログロな描写になっている。
でも二人ともちゃんと人間だ。
かたっぽは極悪サイコパスな大量殺人者で、もう片方は口だけ立派な偽善者でチャイルドマレスターのクズだけど。
…なんでこんなひどいキャラクターなのに魅力的だったり理解できちゃったりするんだろうな。不思議。
で、こいつらは救われないけれども、ほんのすこし行き掛かりにすれちがうだけの脇役に格好いいレズビアンがでてくる。
しかも夫婦的存在の彼女持ち。この人たちは普通に幸せに力強く生きていけそうなんだよね。
同性愛=モンスターな話ってわけでもないってところに驚いた。
メインの男二人の関係は異常性の一要素だけど、こっちの女性の関係は強さと聡明さの理由になっている。
男役女役がきっちり決まっていたり、謎の想像ゲイバーみたいなところがでてきたりするのは時代かな。
こういう、理解の助けにはならないかもしれないけれど気づいた当事者の命綱になるような作品を見つけるたびに、セルロイドクローゼットを観返したくなる。
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