馬脚チラリズム

馬脚チラリズム

セクマイ的感想文置き場。本とか本じゃないものとか。

はじめに

  • このブログは、ヒギリが読んだり観たりしたものの感想置き場です。

セクシュアリティジェンダー関連のもの、あるいはそういった視点で読んだもの書いたものを中心においていきます。

セクマイ本もあれば、勝手にセクマイ視点で読んだものもあります。

  

おもにブクログや別のブログや自分のメモに書き散らしたものをまとめてあります。

読んだ日(感想を書いた日)と、このブログにアップした日は必ずしも一致しません。

書いた時点の感想もあれば、加筆修正をくわえたものもあります。

当面は前に書いたものを日付順に移動させていきます。

 

※私ヒギリはアセクシャル(恋愛しない人)を自認していますが、アセクシャル代表ではありません。

 これはあくまでアセクシャルの一人である私の感想です。

更新履歴

2018/01/24

 

higirisbookshelf.hatenablog.com

 

 

2018/01/21

 

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2017/10/29

 

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2017/10/19

 





 

NHKプレミアムドラマ『弟の夫』(第1回)

NHKプレミアムドラマ(全3回)の一回目。
タイトルのとおり、亡き双子の弟の夫と会うことになったシングルファーザーの物語。

 

ゲイの話らしいのにLGBTドラマ、みたいなあおりがついていたから警戒しながらみた。
制作と宣伝は別とはいえ、原作がよくてもメジャーな場所で映像になると、変な改変をされることが多いから、「よくわかってない人が適当に流行りの現代問題をとりあげてみました」みたいなつくりになっていたら嫌だ。


けど、メインはゲイだけど『ゲイとかいう変な人たちの特別な話』じゃなくて家族という形を問う話になっていてほっとした。
ゲイがそこらにいる当たり前の人間として扱われていて、しかも『家族のかたち』というテーマの一要素として描き出されている。
ああー…すごいな。今日日的。国営放送でこんなのが見られる時代に生きてるよ。

 

いいなと思ったのが、主人公の偏見の度合いと言動。
完全ウェルカムの絵にかいたような善人じゃなく、ホモ死ねとかそんなのは異常だとか口走るほど差別的でもない。
性的な目で見られたらどうしよう勘弁してくれよとか失礼なことを考えてもそれを口には出さない。
同性愛について娘にあえて説明はしないけど口止めもしない。
戸惑いつつもお客さんとして礼儀をもって接している。
少年時代に弟にカムアウトされたときは「あ、そ、そうなんだ…」みたいな感じで否定しないようにがんばってる。

ホモフォビアうんぬんというより、この人の性格とか対人スタイルが良識的なんだと思う。
なんかこの、受け入れきれてないけど罵倒や否定をしない、だからぶつからないし向き合いきれない感じがリアルだなって思った。

 

「普通じゃない」弟を「普通の」兄が受け入れる話じゃないのもいい。
主人公は不労所得で生活していたり、離婚していたり、元妻と健全に面会していたりする。
婚姻した夫と妻と子供が同居して父は仕事母は家事およびパートみたいな「普通の」家庭じゃない。
マジョリティじゃない普通を生きているという点で、ひとり親家庭もゲイカップルもかわらない。
今後でてきそうな、その他の人たちも、もっと言えば、誰でも。

 

マジョリティの立場からマイノリティを観察したり分析したりする視点じゃない、マジョリティである自分を問う視点がある話を観られるのは幸せだ。

 

 


気になった部分がいくつか。


すごく常識的で気遣いのできる主人公が初対面の外国人にいきなりタメ口。
原作の漫画なら違和感がなさそうだけど、佐藤隆太がそういうキャラっぽく見えないからなんか横柄な感じがする。

 

40歳前後っぽい主人公の回想で、10代前半っぽい弟が「ゲイ」という言葉を使っていたけれど、当時でこの年齢(肯定的な情報が少ない上に自己肯定が難しい年齢)なら「ゲイ」より「ホモ」じゃないかな。
でも「ホモ」だと差別語だからダメなのかな。だとしたら普通にそんな配慮がなされているということになるのでそれはそれですごい。

 

夫の服装。虹色Tシャツはベタベタすぎて笑う。でも把瑠都がくそかわいいからOK。

 

徐々に打ち解けてきている今後が楽しみ。

 

www.nhk.or.jp

 

弟の夫 全4巻セット

弟の夫 全4巻セット

 

 

 

小野ハルカ『桐生先生は恋愛がわからない。』小学館 つづき

前にも書いたけど、『桐生先生は恋愛がわからない』というアセクシャル漫画(?)を少しずつ読み進めてる。
うーん。ちょっと頭でっかちかなぁ。
今の私にとってアセクシャルであることはさほど重要な問題ではないから、この話はあまりにもすべての問題を「恋愛しないこと」に帰結していると感じてしまう。
多分、私の中のアセクシャル性の比重と、この漫画のマイノリティ性の比重があってないんだと思う。

 

 

主人公がわかってほしい部分、セリフやモノローグで一所懸命説明している内容は、わかるけど説明過多で共感のまえに食傷してしまう。
この話はお仕事漫画というよりセクマイ漫画で、あくまでアセクシャルであることがすごく重要な意味をもつ。もちすぎてる。

 

主人公は漫画家という「表現する仕事」をする上で自分がマイノリティであることはすごく不利なんじゃないかみたいな悩みをかかえている。
でも、本当は主人公だって「恋愛しない人」というだけの存在じゃない。
他のマジョリティ性もマイノリティ性もかかえているはずなんだ。
たとえば主人公はたぶん身体障害も知的障害も精神障害もないし右利きだし日本人外見の日本国籍だし両親そろった一般家庭の出身で教育も受けているくらいマジョリティだ。
だけど主人公にはそれが見えてない。
自分がマジョリティな部分に無自覚だから、ジェンダー規範や恋愛至上主義の不条理やそこから外れることの生きづらさを訴えても、自分の傷にだけ敏感な人に見えてしまう。

自分の漫画を読む人たちや一緒に仕事をする人たちのマイノリティ性にも無自覚だから、自分だけ孤立気分になっちゃうんだと思う。

恋愛マジョリティとも、別の部分のマイノリティ性でならつながれるはずなのに、そういう発想にならないのがすごくもったいない。

 


とはいえ、アセクシャルの話を恋愛漫画の文脈で描くってこと自体が難しいんだろうと思う。
だってアセクシャルって恋愛しない人だから。
恋愛しない人が恋愛について考える話なんてどうしたって頭でっかちな考えの羅列にならざるを得ない。
恋愛しない人が恋愛(させたがる世の中でどうやったら楽に生きるか)について考える話、ならいける気がするけど、恋愛しないで生きていくには恋愛以外のことに力をさけばいいだけの話だしなあ。

ただ、恋愛しないとか性愛に興味がないというありかたは、「こんな部分で嫌な思いをします」「こういうことでじわじわ生きづらくなってます」「こういう人もいるんです」といちいち主張しなきゃ気づかれない程度にはマイナーなセクシュアリティだから、こういう本も必要なんだろうな。
あんまりマジョリティの理解を啓発する書き方ではないと思うけど。

でも、この書き方は不器用でめんどうくさいけど嫌いではない。
こうやって声をあげてくれる人がいることをありがたいと思う。

 

 

三田織『白のころ』東京漫画社

BL漫画の短編集。
セクシャルマイノリティものではなく、ほのぼの系日常BL。
だけど、「まほうのおくすり」の親子関係が妙にリアルでなんかうわーってなった。
Xメンのキュアみたいなおくすりをつくりたいおかあさんの息子の話。
描き方は重くない。おかあさんも自己否定もつらいこともみんな回想だからかな。
でも受け取るマイノリティとしてはずしっとくる。

おかあさん(親)からの言葉って子供にとってはすごい重みがある。
お母さんは子供に幸せになってほしいから普通にさせようとするし、「そんなんじゃ幸せになれない」のを恐れて、自分にできることをしようとする。
でも、そんなのは子供からしたら「お前は幸せになれない」という呪いにしかならない。

今ここにいるその子を否定するやり方は呪いでしかないけれど、でもこの話の「おくすり」の中身は恥や断罪ではなくあくまで子の幸せを祈るもので、やさしい。
重くて、やりきれなくて、でも愛なのは本当で、切り捨てにくくて苦しい。
主人公があんまり苦しんでない(トラウマ萌えな描き方じゃない)からちょっとほっとする。

 

娘の安全や幸せを願って女性差別を再生産してしまう母親たちの話、たとえば割礼だったり結婚圧力だったり『タブー』http://booklog.jp/users/melancholideaの話だったりを連想する。

 

 

白のころ (マーブルコミックス)

白のころ (マーブルコミックス)

 

 

タブー―パキスタンの買春街で生きる女性たち

タブー―パキスタンの買春街で生きる女性たち

 

 

 

  

那木渡『恋愛不行き届き』竹書房(ネタバレあり)


ずっと互いに好きというか性的な目で見てたけど、なんやかんやでこじれまくるふたりが主役のBL漫画。
クローゼットなゲイ(自覚あり、自覚なし)の大暴走な話なんだけど、そうならざるを得ない背景がきちんと存在しているのが面白いと思った。

あとがきに「(脇役も)皆見た目ではわからないギャップや悩みをかかえながら人生を謳歌しているんだといつもコマ外に想像しながら描いていました。」とある。
あとがきを読む前から、そうやって描いてくれてるんだなってわかる描き方だった。

 

県議会で同性婚を争うとか、変化までに3年じゃ短すぎるだろとか、私が主人公の友達だったら絶対そいつと別れろっていうわとか、いろいろ思う。

でもこれだけ当たり前に多様な人が出てくるって本当すごい。未来的。

作者の描き方もさることながらこれが理解される世界にかわってきているんだと思えて心強い。
共感できなくても、文脈が理解される程度には世界はすすんでる。

 

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エリナー・ファージョン 『ガラスのくつ』 岩波書店


ファージョンのシンデレラ。
ディズニーみたいなひらひらした仕草でくるくる動く絵が浮かぶ
生き生きとしたキャラクターと美しい文章。
キャラクターが、素敵なのもろくでもないのも人間くさくて楽しい。
でもセクマイ読みなのでメインストーリーは置いといて、気になる脇役の感想。


ピュアピュアおぼっちゃまな王子様には、道化が配属されている。
この道化のマイノリティ感が良かった。
道化であることが属性で生き方で扱われ方だから、マジョリティの王子様には人間扱いしてもらえない。
エラと王子が出会った後、恋に焦がれるセンチメンタル王子を笑わせようとして道化が乙女のようにふるまってみせる。

 

  「やめろ、そんなばかなことを。あの人は、ちっともおまえみたいではないよ。」
 道化の笑顔はきえました。道化は花輪を頭からとって、また、その花をオレンジの木にくっつけようとしました。花がぽろぽろ、地面にちったとき、道化は両手で顔をかくし、ほんとになきたいなと思いました。でも。だめです。道化はほんとの涙をながすことも、ほんとにわらうことも、できないのです。鏡の中のなみだがぬれていないように、鏡の中のわらいに声がないように、道化はただ、王子様の考えをまねるだけです。

 さらっとたった数行で、どうでもいい脇役に物語をもたせる描写ができちゃうからファージョン大好き。

 

マイノリティが攻撃されずに生きるための知恵のひとつにステレオタイプを演じるとうい方法がある。
マジョリティが安心できる像を演じれば、マイノリティを名乗ることをお許しいただける。
でもそれは、名乗ってるだけで「自分」でいられるわけじゃない。
オネエやオカマやホモネタが嘲笑とともに受け入れられるから日本に差別なんてないよ、みたいな現実を連想する。


ワイルドの『スペイン王女の誕生日』の道化とか、ハリーポッターのルーピン先生(とロンのママ)とか『ハゲを生きる』と『からかいの政治学』が読みたくなる。

 

 

ガラスのくつ (ファージョン作品集 7)

ガラスのくつ (ファージョン作品集 7)

 

 

 


 

 

ハゲを生きる―外見と男らしさの社会学

ハゲを生きる―外見と男らしさの社会学

 

 

女性解放という思想

女性解放という思想

 

 

 

 2011/03/04 再読